仙人草の咲く庭で

犬と一緒に散策する里山スケッチ。自然界のさまざまな存在や、見えない世界へと誘われる心のスケッチ、モノローグ

台風一過・虫の声

台風19号が日本列島を通過。

台風が紀伊半島に接近中の12日の午前中のこと。

雨はまだそれほどきつくなく、どちらかと言えば優しい降り方だった。

家の横の農道を歩いている時、雨の中で虫の声が聞こえてきた。

雨の中では普通、虫たちも静かにしているものと思っていたが、

休む暇も惜しいのか、命の短さを知ってか・・・

静かに降る雨とそれに調和するかのようなひっそりとした虫の声に、

しばらく足を止めて聞き入った。

一瞬、心がしんと静かになった。

その後台風は夕方頃に、伊豆半島方面に上陸したらしい。

台風通通過後の吹き返しの風が吹き荒れていた深夜、

草むらの中では、虫たちがもう鳴き始めていた。

虫のような小さい生き物たちが、こんな大きな嵐の時に

どうやって身を守りながら過ごしているのだろう?

妄想の中で細い草の裏側に必死につかまって雨を避けながら、

大風に揺すぶられているバッタのような虫の姿が浮かんだ。

 

翌朝、家の裏で風に吹きちぎられてボロボロの糸くずみたいに

なった蜘蛛の糸に、必死でつかまっている蜘蛛を見かけた。

かなり大揺れしていて、なかなかアクロバティックな様子だった。

(私はクモさん頑張ってるなあと思いながら通り過ぎた)

 しかし、雨の中で聞いた虫の声にはそんな必死さは微塵もなく、

心の静寂さを呼び覚ましてくれるような音色だった。

 

人間は台風だ怪我だ病気だと事あるごとに一喜一憂し、災いから身を

守るためにはこれこれが必要で・・・そのためにはあれとこれだけでは足りず、

あれもこれもやらなければ・・・と喧騒の中を闇雲に生きている。

聞こえてきた虫の声は、小さな虫たちが降りしきる雨の中でも

自分の歌を歌って、自然に委ねきった心そのものを生きているということを

私に知らせてくれた。