随分以前に書いた朝の散歩のスケッチから。
緑のアーチをくぐり抜け
光と影の網目模様の中を歩いて行く
枝と枝の間に張り巡らされた大きな蜘蛛の巣が
虹色の光を投げかける
小径の真ん中あたりでじっと止まっていた蝶々が
ひらひらと音もなく
薄暗い林の中に消えて行く
気まぐれに名前を付けた小石や
ショウジョウバカマ、イワカガミに挨拶を送る
散歩道の終着点に立つ年老いた木の傍に立ち
そっと触れ、耳を当て
導管の中、木が水を汲みあげる音に耳を澄ます
微かな木の呼吸に同調するかのように
冷んやりした微風が通り抜けて行く
見上げると重なる枝葉の間から
ほんの少しだけ見える青空
小鳥の声が響く中
木の擦れる音がする
特に変わったことは何もなくて
たくさんの目に見えないことに満たされる