仙人草の咲く庭で

犬と一緒に散策する里山スケッチ。自然界のさまざまな存在や、見えない世界へと誘われる心のスケッチ、モノローグ

第1章 ホセ・ベニチェ・サンチェス 幸福への道(抜粋) 〜植物のスピリット・メディスンより〜

第1章の初めの方に出てくる印象的なエピソードの語り手、ホセ・ベニチェ・サンチェスはこのような人でした。文字だけを追って想像するのとは、また違った印象になるのではないかと思います。彼のアートも次の記事で紹介しようと思っています。ウイチョル族のアート、面白いです!お楽しみに。

José Benítez Sánchez (ホセ・ベニチェ・サンチェス)

The Dismemberment of Watákame, 1973

The Dismemberment of Our Great-Grandmother Nakawé

「幸福へと向かう道」ホセ・ベニチェ・サンチェス (第1章より抜粋)

私はホセ・べニテス・サンチェスという名前の、あるウイチョル・インディアンを訪ねて行った。ホセはあるサークルの中では神秘家のアーティストとして有名で、彼自身の部族の人々の間ではシャーマンとして知られていた。彼は時々メキシコのテピク近くの村に住み、それ以外のときはプエルト・ヴァヤルタというリゾートの街に住んでいた。 私はその街に彼を捜しに行った。街の最も貧しい地区の一つにある彼の家に近付きながら、私はその一年前、彼にはじめて出会ったときのことを思い出していた。この人物はインディアンの標準からすれば莫大な収入を得ている男だった。だが、私を快く家に入れてくれたとき、その家の中で唯一家財道具と呼べそうな代物は、見たところ扇風機一台だけだった。彼がメキシコ大統領に会うために、数時間のうちに発たなければならなかったので、その訪問はごく短いものだった。

ホセは陽気にバス代を持っていないことを白状した。ボロボロの半ズボンを見下ろしながら、彼は大統領に挨拶するためにはくズボンの一本も持っていないことを認めた。明らかに彼は、何故成功を収めた人物がそれほど貧しいのかと、私が混乱しているのを感じ取ったのだろう。というのは、次のような話をしてくれたからだ。

 

 子供の頃、私はじいさんを崇拝していた。じいさんは力のあるシャーマンだった。私が分別のつく年頃になったと感じたある日、じいさんは話をしてくれた。「ホセ、人がもつことのできる力には二つのタイプがある。ひとつは自分自身の個人的な理由のために使われる。もうひとつは部族のみんなのために使われる。おまえは一番目か二番目のタイプの力の道へと歩いて行くことができる。だが、このことはおまえに言っておこう。二番目の道が幸福へと向かう道だ」じいさんはすぐれた賢者だったので、私はじいさんの忠告を受け入れ、二番目の道に留まってきた。神が私に何かを授けてくださるときには、すぐにそれを皆の役に立つように回すことにしているんだ。

 

ホセの存在は満足気に輝いていた。彼の祖父が自分の話していることの意味を知っていたのは明らかだ。私はスーツケースの中を探ってズボンを一本見つけ、バス代を添えて彼に差し出した。彼は心からの感謝とともに私の贈り物を受け取ったが、少しも驚いた様子はなかった。それから彼は幸福へと向かう道に最初一歩を印した私をあとに、大統領に会うため、あわただしく旅立って行った。