仙人草の咲く庭で

犬と一緒に散策する里山スケッチ。自然界のさまざまな存在や、見えない世界へと誘われる心のスケッチ、モノローグ

お盆の頃のこと

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蝉の羽化

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蝉の羽化 2

 前回の記事(切り株)を書く少し前の、お盆と前後する頃のこと。

夕方、出かけようとしていた時、庭のジンジャーリリーの葉っぱに

羽化したばかりの蝉がくっついているのを発見。

早速パートナーのムー氏を呼んで、証拠写真を撮ってもらった。

蝉の抜け殻は野草の楽園と化した我が庭では珍しくも何ともないが、

殻から抜け出したばかり、つまり羽化したてで元、自分の抜け殻に

しがみついている蝉を見るのは、初めてのことだった。

真っ白だったので最初アルビノの蝉なのかと思ったが、それは生まれたばかりの

姿ということらしかった。

しばらくしたら蝉の羽や身体全体が色づいてきて、よく見かける蝉の姿に

近づいてきた。

多分、あの蝉は、夏の暑さをことさら掻き立てるようにせわしく鳴きたてる

アブラゼミで間違いないだろう。

貴重なものが見れて良かった!

前回の記事(切り株)を投稿した後、そのほぼ同じ日に旧い友人が亡くなった

という知らせを受け取った。

その友人とはもう20年近く交流していなかったが、今年に入って、

友人の元妻から彼の喉の具合が悪く、食べ物が喉を通らなくなり

ひどく痩せてきた、誰か彼に医者に行くようにアドバイスするか、医者に往診を

頼めないだろうかという連絡をもらっていた。

彼女が直接やればいいのではないかと、疑問に思う方もいるかも知れないので、

その辺のことをザッと説明すると、彼の元妻はサンフランシスコ在住のアメリ

の市民権を持ったフランス人で、彼女ができることには限界があった。

彼は41年前に会った時、すでにマクロビを実践するストイックな人物で、

「相似象」という知る人ぞ知る小冊子を、日本から持って来ていた。

今思うと、彼は非常に探究心が強く、出会った時は23才くらいだったはずだが

年齢の割に老成していたのかも知れない。

切り株が崩れ落ちたのと、彼の死の知らせは、私の中ではシンクロしていた。

そして、その時期と前後はするのだが、生まれて初めて目撃した

蝉の羽化は、新たな生命(世界)の誕生・再生を象徴していた。

こじつけだと思われるかも知れないが、

私が目にする世界は、私の世界、宇宙を映し出していて、

そこで目にすることを私はサインと受け止めている。

ここに引っ越してきてから25年。農道の脇に鎮座していた切り株が

崩れ落ちたことと、羽化したばかりのアブラゼミの姿を生まれて初めて

目撃したことは、私の宇宙の中でひとつに繋がった出来事に思えた。

お盆の時期を前後して、彼はあちらの世界へと旅立ち、蝉は生まれ変わり、

それを眺める私も同じ宇宙の流れの中で、

かつ消え、かつ結びて、ひとときも留まることのない

淀みに浮かぶ泡沫(うたかた)なのだった。

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蝉の羽化 しばらく後