仙人草の咲く庭で

犬と一緒に散策する里山スケッチ。自然界のさまざまな存在や、見えない世界へと誘われる心のスケッチ、モノローグ

ベオワラ

水への旅 3

カリフォルニアに住んでいた頃

山の中のコミュニティーに住む知り合いを訪ねた時のこと。

麓の町から歩いたとしたら、丸1日、8時間くらい

ダートロード(舗装してない土の道)を車で登って

たっぷり2時間はかかる。

知人は何もない山の中

気楽を絵に描いたような一人暮らしだったので

彼のテント(Yurt)で、何日ものんびりと過ごさせてもらった。

山を少し下ったところにベオワラという場所があるから

子供を連れて行ってみれば、という知人の勧めで

ある朝そこに出かけることになった。

ベオワラというのは英語で書くとBear Water

クマが出る川というような意味だったのかも知れないが

その時は何も思わず、ベオワラ目指して

知り合いの教えてくれたルートに従って

尾根づたいに下りて行くと

きれいな谷川が流れる場所に辿りついた。

私たち親子3人以外、人は誰もいない。

明るい日差し、透き通った水、自然そのものの自然。

誰かを気にする必要もなく

のびのびとして、水辺で子供を遊ばせながら

洗濯をして、洗濯したものを木の枝にかけて

(まるで桃太郎のおばあさん!)

干している間、仰向けにゴロンとなって青空を見て

こんな暮らしがずっと続いたらいいのになあ、などと妄想を膨らませ

子供を抱っこして川の中に入って、肩まで浸かって。。。

 

小さな流れの反対側の岩のそばまで行って、

透明な水しぶきを全身に浴びた。

流れる水、ほとばしる水の音、自然の波動、光る水

ここにはブッダがいる、と感じて

岩に向かって手を合わせた。

私と子供がそんなピュアな時間を過ごしている間、

(当時の・・・)パートナーは、川の中を歩いて

上流に探検に行って、彼もまたいい時間を過ごしたようで

ニコニコ顔で戻って来た。

帰り道、少し湿った草の上に生まれて初めて

黄色いスミレが咲いているのを見つけた。

高校の時の英語の教科書に出てきた詩、Yellow Violet

そのYellow Violetだ!

ナナオという知り合いの詩人が、スミレをさっと湯がいて

酢味噌につけて食べると「美味いんだよ!」と言っていたのを思い出して、

少しだけ摘んでお土産に持って帰った。

お浸しにして食べてみたが、少しだけヌメッとしている程度で、

特にどうということはなく、体験のための体験だった。

ゆっくりと自然を満喫する山の暮らしの中でも、

さらに自然そのものとひとつになって、その中に

溶け込んだような、そして今となっては・・・

得難いほど貴重な私の脳裏に刻まれた1日。

カリフォルニアの山がくれた大切なギフト。

Yellow Violetとともにたった1枚の写真のように切り取られた思い出。

*カリフォルニアの固有種の黄色いスミレは

California Mountain Violet(学名:Viola pinetorum)

とも呼ばれるらしい

en.wikipedia.org  

参考までに、多分教科書に出ていたと思われる詩

*POETRY FOUNDATION poetryfoundation.orgより転載

*気力が湧いたら、この詩を翻訳してみたいと思うが、今のところそこまでいかないのでここに掲載するだけにしておきます。またいつか。。。すでに翻訳されているものをご存知でしたら、是非ご一報ください。お願いします。

The Yellow Violet

When beechen buds begin to swell,
  And woods the blue-bird’s warble know,
The yellow violet’s modest bell
  Peeps from the last year’s leaves below.
 
Ere russet fields their green resume,
  Sweet flower, I love, in forest bare,
To meet thee, when thy faint perfume
  Alone is in the virgin air.
 
Of all her train, the hands of Spring
  First plant thee in the watery mould,
And I have seen thee blossoming
  Beside the snow-bank’s edges cold.
 
Thy parent sun, who bade thee view
  Pale skies, and chilling moisture sip,
Has bathed thee in his own bright hue,
  And streaked with jet thy glowing lip.
 
Yet slight thy form, and low thy seat,
  And earthward bent thy gentle eye,
Unapt the passing view to meet
  When loftier flowers are flaunting nigh.
 
Oft, in the sunless April day,
  Thy early smile has stayed my walk;
But midst the gorgeous blooms of May,
  I passed thee on thy humble stalk.
 
So they, who climb to wealth, forget
  The friends in darker fortunes tried.
I copied them—but I regret
  That I should ape the ways of pride.
 
And when again the genial hour
  Awakes the painted tribes of light,
I’ll not o’erlook the modest flower
  That made the woods of April bright.