仙人草の咲く庭で

犬と一緒に散策する里山スケッチ。自然界のさまざまな存在や、見えない世界へと誘われる心のスケッチ、モノローグ

木・祈り 〜その3〜

以前、京都御所の敷地にある梨木神社の隣にマンションが建ったことがあった。その時も御所の中にマンションが建つなんて想像もできないことだったので、私としては突然の出来事で心底驚いた。梨木神社は、京都に住んでいた頃、時々水汲みに行かせていただいていた神社だったので、余計に信じられないという気持ちが強かったのだが、そう言えば、あの頃から急に似たような話をあちらこちらで聞くようになった気がする。

明治神宮の中にもパワースポットとして有名な清正の井戸がある。東京の都心にありながら清らかな水が湧き出ていて、大勢の人が来ても、常に湧き出る水のお陰でその場所の静けさ、浄らかさが保たれている聖霊に守られた場所だと感じた。東京のど真ん中に聖地があったなんてと、大都会東京の生命の源に触れたことに心から感動した。神宮外苑の樹木を伐採するということは、東京という街全体の生命の中心、その源を脅かすことに直結している。

鎮守の森は私たち日本人の魂を育み、守ってきた、魂の故郷でもある。その鎮守の森の樹木を大量に(計画では1000本)伐採して、そこにショッピングモールを作るということは、私たちの精神性がそこまで即物的で、地に堕ちたということを象徴する狂気の沙汰だと思う。

以前、NHKのドキュメンタリー番組を見ていたく感動したことがあった。明治天皇が亡くなられた後、日本中から持ち寄られた木をどのように、どういう段階を経て植えていけば森が形成されていくのか、徹底した調査研究のもとに神宮の森の植樹計画がなされ、当初200年後に生命の循環を持った森が出来上がるだろうという見通しだったものが、その半分の100年で森が出来上がった指標とされていたオオタカの営巣する姿が確認されたのだという。その番組を見て以来、一度神宮の森を訪ねてみたいと思っていたのが先月ようやく実現して、清正の井戸にも感動したばかりだった。そのこともあって、余計に神宮外苑の森の再開発計画という名の大量の樹木伐採というニュースに言葉を失ってしまった。植樹計画を進めていった人たち、さらに遡ってこれまで自然界の聖霊に祈りを捧げてきた祖先たちが今、神宮外苑の森の伐採計画を知ったら何と言うだろう?