仙人草の咲く庭で

犬と一緒に散策する里山スケッチ。自然界のさまざまな存在や、見えない世界へと誘われる心のスケッチ、モノローグ

お盆とユング 3

前進による改善、つまり新しい方式や工夫による改善は、

もちろんはじめは感心させるものであるが、時の経つとともに、

それらは疑わしくなり、いずれにしても高価につく。

それらは決して、全体としては人々の満足や幸福をたかめるものではない。

たいていは、人間存在のはかない甘味料である。

それはたとえば、不快な、ただ生活のテンポを速めるだけの、

そしてわれわれに昔と比べて時間のゆとりをもたせない、

迅速な報道機関のようなものである。

昔の親方(マイスター)たちは、「すべて急ぐものは悪魔の仕業」

というのがつねであった。

他方、逆行による改善は、原則として、より安価でその上永続性がある。

というのは、それらは過去のより単純で確認ずみの方法に立戻って、

新聞、ラジオ、テレビジョンなど、いわば時間節約のための新法案をすべて

出来るだけ使わないようにするからである。・・・(途中、省略)・・・

しかしそれは理性的思考の産物ではない。

むしろそれは故意に目をなかばとじ、耳に蓋をして、存在の形を見、

声を聴こうとする人にあらわれてくるような、幻像(ヴィジョン)である。